相続分の取戻権について
仮に被相続人の遺産を、複数の相続人で分割するケースがあった場合、通常遺言書などがなければ、遺産分割協議に従って遺産分割が行われる事になりますが、相続人の内の1人が相続分の譲渡を、全くの赤の他人に行った場合、色々な相続を円滑に進める上での問題が生じます。譲渡を受けた本人は、他人であろうと当然遺産分割協議に入る権利がありますので、最悪の場合、協議が前に進まなくなってしまう場合も考えられます。しかしながらその様な事になった場合でも、法律上定められた権利ですので、ルールに従う他ありません。
しかしながらこのような場合に、法律上対処策が施されています。これを相続分の取戻権と言いますが、共同相続人がその価値や、費用を償還して相続分を譲り受ける事が出来る様になっています。但しこの権利はその譲渡が行われた時から、1ヶ月以内に実施しなければならないので、時間的猶予があまりありません。相続分の取戻権を請求すると決まれば、出来るだけ速やかに請求する事が大事でしょう。問題は、その取戻権を請求はできますが、ただで相手方が相続分の権利を返還してくれるのかという問題があります。相続分の譲渡に法律上の制限など取り決めはないため、完全な第3者でも相続分を譲り受ける事が可能です。普通に考えて、何も見返りを要求をせずに、相続分の返還をしてくれると考える方が難しいでしょう。従ってこの様な状況になり、相続分の譲渡を受けた人物に、相続上なんらかの悪意があった場合、根気よく交渉を行う必要があります。
当然この様な場合は、共同相続人で対応を行ってもうまく話が進まない場合も十分に考えられますので、出来れば弁護士等の代理人を置き、譲渡を受けた人物と交渉する事を依頼する方が間違いがなく、無難な対応だと言えます。相続分の取戻権を請求できる猶予も比較的短い事から、それらの対応も含めて弁護士に依頼をしたほうが良いでしょう。しかしながら、まずはその様な安易な相続分の譲渡をさせない様関係者と話し合っておく事が大事です。