失踪宣告について
被相続人が死亡し、複数の法定相続人がその遺産を相続する場合は、通常遺産分割協議等を経て、その遺産を分割する事になる訳ですが、この時に相続人の中に生死の不明な者がいる場合、当然ながら遺産分割協議は進まず、遺産の分割が行えない、もしくは協議自体が行えないという状況もあり得ます。このような場合、他の法定相続人の失踪宣告の審判の申し立てにより、家庭裁判所がその審判で申し立てを許容すると、その生死不明者は相続権利を失効する事となります。
この失踪宣告には2種類の概念があります。1つは普通失踪であり、もう1つは特別失踪です。普通疾走は原因の特定できない失踪を差し、特別失踪は戦争、その他災害等の特殊な事例を原因とする失踪を指します。この違いは普通失踪が失踪後7年の経過を持って始めて失踪と認定出来るのに対し、特別失踪は失踪後1年間でその失踪が許容されるという事になっており、失踪が認められるまでの期間に大きな差があるのです。失踪宣告が申し立てられ、家庭裁判所がその宣告を許容しても、その段階では失踪は確定しません。その後官報に掲示され、普通失踪で6ヶ月、特別失踪で2ヶ月の期間公告された後、始めて失踪宣告が法的な効力を持つ事となります。この時に家庭裁判所は審判所謄本を送達しますが、この日から2週間以内に審判に対しての不服申し立てが行われなければ、審判は確定する事となります。結果的に全ての手続きを終えるのには、失踪宣告の申し立てがあってから約1年近くの時間を要する事になります。
失踪者は失踪宣告が確定した段階で10日以内に失踪届けを、宣告の届け出人の管轄市町村役場に提出する必要があります。失踪者はそれぞれの失踪期間満了と同時に死亡したとみなされるので、その段階で始めて相続権利を失いますが、代襲等の可能性もありますので、相続に関するこれらの手続きは弁護士等の法律の専門家に、その依頼を行う事が間違いのない判断であると言えるでしょう。