特別受益の持ち戻しについて
被相続人が死亡して、法定相続人にその遺産が分配される時に、被相続人が生前に相続人の1人に贈与を行っていた場合、相続時にその贈与が特別受益として扱われる事になります。ところが税法上は、生前贈与から、被相続人の死亡までが3年以上経過していた場合、相続税は課税されず、贈与税が課されますので、過去の処理となり相続とは関係ないのですが、相続の民法制度の中では、その生前贈与が相続に関係してきます。この事を特別受益の持ち戻しと呼び、受益分を含めた相続計算がなされます。
これは、主に相続上の公平な分割を目的とした遺産分割を目的とした処置であり、相続人同士の中で不公平感がないようにされた処置だと言えます。ただ、この特別受益の持ち戻しを行ったからといって、完全なる分割が出来る訳ではありません。仮に特別受益を受けた受益者である相続人が、本来受けるべき相続分を超えて贈与を受けていても、その超過分について相続時に返還をする義務を負う訳ではないからです。これは税法上の問題でもあり、また被相続人の生前に贈与を行ったという事実から、その意思も尊重され、全体的にバランスが取られていると考えられます。相続人が被相続人の意思を尊重しなければならないという事を考えると、この取り扱いについては前向きに捉えなければなりません。しかしながら、やはり相続人の間でトラブルを起こさない様にする為にも、被相続人の生前の遺贈も含めた相続が出来る限り、公平なものとなる様にしておく事が大事でしょう。
相続に関する税法上の取り扱いと、民法上の取り扱いは全く同じではなく、いくつかの点で異なっています。またそれぞれ相続上の処理や取り扱いは、非常に複雑なため、生前の行為1つを取ってもよくよく考えておく必要があります。これらの行為について不測の事態を招かないためには、やはり弁護士等の専門家に、普段から相談が出来る関係作りをしておく事が大事でしょう。