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父債子還について

被相続人の残した遺産には、プラスの資産とマイナスの負債が存在しますが、相続人は基本的にその両方の遺産を引き継ぐ事になります。この時に全ての遺産を相続する単純承認をするか、資産の範囲内で負債の返済を行う限定承認を行うか、相続の放棄をするかを選ぶ事になります。ここで古い中国の慣習に、父債子還という習わしから来ている古語があります。この言葉は、父親の残した借金は子の代で返すという、封建的な考え方から来ている言葉ですが、遺産に債務があった場合に、債権者から相続時にこの言葉を引き合いに出される場合があります。

昔は相続に対する考え方が現在のものとは大きく異なり、日本でも封建的な家督というものとは切っても切れない関係にあったので、借金も代々受け継がれる物の1部という事から来ている考え方ですが、現在の民法での家督は形式上の意味合いが強く、相続についての可否は相続人本人の意思によって選択すべきという考え方となっています。従って被相続人の責任で生まれた資産や負債は、基本的には被相続人のもの、相続人は相続という観点からの責務を負うだけで、相続するのであればその全てを、しないのであれば全てを放棄するという選択を与える考え方が尊重されている訳です。限定承認についてはその考え方の上に不要な負債を相続人が持たない様に考慮された処置だと言えます。

一方で、父債子還という考え方は、どちらかというと債権者寄りの考え方を示しています。貸した物は返すのが当然という考え方から来ているのですが、被相続人の借入れた負債は被相続人の意思とは異なり、あくまで被相続人の資産としての観点で見れば、現在の考え方からすると、非常に封建的な古い考え方だという見なされ方がされているため、主流の考え方ではありません。相続人に選択の幅が持たされている以上、最終的には相続人の意思で決まる事ではありますが、基本的に負債を背負う必要性がない物について道徳的に責任を負う事は、現在の民法ではあまり意味のない事だと言えます。負債が資産を大幅であるないに関わらず、超過する事が判明している場合には、迷わず限定承認や遺産の放棄を考えるべきでしょう。

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