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母の遺産相続の件で、お尋ね致します。
私は5人兄弟で、長男は昔から浪費癖がひどくて借金が絶えず、親がなにかと借金返済に手を尽くしていました。
不動産を売却したり、祖父や父が蒐集していた古美術品等を売ったりしてなんとか借金を清算しました。
借金は総額にして数千万の額になります。
今後高齢の母が亡くなった時には、兄弟5人で遺産を分けることになるのですが、
多額の借金を肩代わりしてもらった長男にも他の兄弟と同等の割合で相続されるのは納得がいきません。
長男の相続に関しては、親が負担した借金の返済額を差し引くことは法的にできないものでしょうか?
(そうなると長男の相続分は無くなると思いますが…) ご回答お願いします。

2014年11月12日投稿者:ヤマジ(50代男性)
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専門家からの回答

仲江 武史弁護士
仲江 武史弁護士

特別受益や相続人廃除については、下記の立山先生のご指摘のとおりと考えます。

さらに補足させて頂くと、お母様がご長男の借金を肩代わりしたことにより、ご長男の債務が完全になくなったとは考えず、お母様がご長男に対し「弁済による代位」によって、なお債権を有していると考える余地があると思われます。
「弁済による代位」が認められれば、実質的にご長男はお母様の財産を相続できなくなるのではないでしょうか。

2016年01月03日14時57分
立山 昭浩行政書士
立山 昭浩行政書士

 まず、お父様のお亡くなりになった際の遺産分割協議(お父様がおじい様より先にお亡くなりになっている場合は、ご兄弟がお父様の代襲相続者として行う遺産分割協議も含む)は完了しているでしょうか。完了していないのであれば、先にそれについて考えなければならないので、ここではそれは抜きにしてご回答いたします。
(完了していないのであれば、まず以下の考え方でお父様(おじい様)の遺産分割協議を行いましょう。)

 第一に、ご質問者様の下記の質問に沿った方法での可能性を考えてみます。
〉長男の相続に関しては、親が負担した借金の返済額を差し引くことは法的にできないものでしょうか?

 借金の返済額を、生前贈与を受けた特別受益として差し引くことができるかということですが、特別受益として認められるのは、その借金が「婚姻、養子縁組のため、もしくは生計の資本のためのもの」である必要があります(民法第903条)。また、借金を作った当時のご長男の資産・収入、社会的地位、その当時の社会的通念を考慮して個別に判断すべきものとされています。
 必要以上の浪費や放蕩などの末に作った借金であれば、「生計の資本のため」としては認められないでしょう。
 さらに、お母様の分の遺産相続であるので、支出したのがお母様である必要があります(お父様の分の遺産分割協議が完了していることが前提のため)。
 特別受益として認められる部分がある場合、お母様の相続財産に特別受益額を加えた額をみなし相続財産として、それを5人のご兄弟で等分した額が一人あたりの相続分となり、ご長男の特別受益額がそれを上回る場合には、ご長男は相続する分が無いだけでなく、他のご兄弟はご長男に超過額の引渡しを請求することができるでしょう。
 この場合、念のためお母様に「借金の支払い分は、遺産分割にあたって受けるべき財産額の前渡しを行った特別受益である」旨を記載した遺言書を作成してもらっておくと、後に争いになった際に有利に考慮されるでしょう。
 ※ただし、遺言はあくまでお母様の意思である必要があります。意思に反して他のご兄弟がお母様に記載させた場合には、その方は相続の欠格者として相続を受けることができなくなるのでご注意ください。そのためにも遺言書は公正証書で作成するのをお勧めします。

 次に、特別受益に該当しない場合を考えてみます。
 お母様が、単に遺言書にご長男を除いた4人にだけ相続させる旨の記載をした場合には、ご長男は遺留分として相続財産の10分の1を請求することができることになります。
 (相続人が5人兄弟だけだとして、一人あたりの相続分は5分の1になり、遺留分減殺請求権としてその2分の1である10分の1の請求権があります。)

 また、お母様がご長男の借金を肩代わりして返済したことが、ご長男のお母様に対する著しい非行であると認められた場合には、お兄様を相続人から廃除することができます(民法第892条、893条)
 お母様にそのような意思がある場合には、お母様が管轄の家庭裁判所に「推定相続人廃除調停申立て」を行うか、遺言でご長男を廃除する意思を表示する必要があります。遺言の場合は、お母様が亡くなった後に遺言執行者が家庭裁判所に「推定相続人廃除調停申立て」を行うことになります。
 この場合、肩代わりして返済した借金が著しい非行とされるためとされるのは、その借金がギャンブル、著しい浪費・遊興、異性問題等で作ったものとされていますが、家庭裁判所はこれらについて慎重に審議する傾向にあり、実際に相続廃除が認められた事例は多くありません。特に遺言の場合には、お母様から事項を聞くことができないので、認められる可能性は一層低くなります。
 また、仮に認められたとしても、ご長男にお子様がいる場合には、お子様がご長男の代襲相続者として相続することができてしまいます。

 いずれにしても、お母様がご存命の間はその財産の使い道や相続の意向はお母様に権限があります。お母様のご意向を尊重してください。
 理想論となってしまいますが、もし可能であるならば、お母様からご長男にあらかじめこれまでのことをお話して、相続の辞退をご納得していただくことが望ましいでしょう。(ただし、相続放棄は事前にすることは認められていませんので、お母様がお亡くなりになった後もご長男には最低でも遺留分を請求する権利は残ります。)

2014年11月13日09時39分

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