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遺言書について伺います。
5年前に亡くなった祖父の事ですが、先日実家で祖父が書いた遺言書が出てきました。
既に遺産分割協議は済んでいますが、またやり直さなければいけないのでしょうか?
当時は分割協議で相当揉めたので、できれば話を蒸し返すようなことはしたくありません…。
遺言書の事を黙っていて無かったことにしたら罰せられたりしますか?
やはり、相続人全員に知らせる必要があるのでしょうか。
当時の相続人は6人でしたが、他界した人を除くと4人になります。
もし遺産分割をやり直すことになった際、他界した人の分はどうなるのでしょうか?
(他界した人は祖父の子。1人は配偶者あり、子なし。もう1人は、配偶者あり、子2人です。)
残念ですが、新しい遺言書が出てきた場合は、その遺言書が有効である限り、前の遺産分割をやり直す必要があります。それは、遺産分割の協議が、遺言書が存在しないことを前提としているからです。有効な遺言書があれば、あとは遺留分の問題が残るだけだと考えられているからです。
もちろん、遺言書があっても、相続人間で話し合いが行われて、全員の合意でその遺言書の内容と異なる内容で相続財産を分割することは可能です。
ですから、今回の場合も、相続人の明さんにその遺言書の存在を明らかにして、その遺言書は自筆証書遺言だと思いますので、家庭裁判所での検認手続きを経て、それが有効な場合はその内容を基本に、改めて話し合いを行う必要があります。
そして、遺言書の内容が皆さんで以前に協議の内容と大きく異ならない場合は、その以前の協議の内容をそのまま維持するのか、あるいは少し調整するのかなどを話し合って遺産分割の内容を定める必要があります。この話し合いには、全員の同意が必要です(たまたま、一部の相続人について前の遺産分割協議の内容と遺言書の内容が一致したとしても、新たな遺言書の存在によって前の遺産分割協議自体が無効となりますので、その一部だけが有効なものとして残るとは考えられていません。)。
新たな遺言書が形式面などで問題の無い有効なものであれば、その遺言書の内容を前提として皆さんで話し合われることになると思います。合意が出来た場合は、全員で、新たな遺言書は存在するがそれでもこの新たな内容で遺産分割の合意をしたとするものです(ですから、当初の遺産分割協議の内容や遺言書の内容と異なっていても構いません。)。そして、後日のトラブルを避けるために、遺産分割協議書と同じような形式が必要です(なお、このような新たな協議については、これを家庭産番所で調停を申し立てて家庭裁判所で話し合いを行うことも可能です。)。
なお、この場合に協議に参加するのは、おじい様の相続人で遺産分割協議後に死亡された方がいるときは、その方の相続人が協議に参加することになります(子供さんの一人が亡くなっている場合は。その相続人である配偶者の方やその方の子供さん全員が協議に加わることになります。)。
協議が出来なかった場合(一人でも反対すれば協議はできなかったことになります。)、すなわち誰か一人でも遺言書の内容通りの財産が欲しいと言われた場合は、以前の遺産分割協議は無効ということになります。
この場合、例えば、相続人が子供だけでA、B、Cいる場合に、相続財産が甲不動産、乙不動産、それに預金だったと仮定します。この場合、以前の遺産分割協議で、Aが甲不動産を、Bが乙不動産を、Cが預金を相続するという内容でその旨の相続登記も終了していた場合に、新に、甲不動産はCに、乙不動産はAに、預金はBにという内容の遺言書が発見された場合、協議が出来なければ、CはAを相手に甲不動産について所有権を取得したことを理由とする所有権移転登記請求訴訟を起こし、BはCに対して預金の引き渡しを請求できるという裁判を起こすことになります。そしてこのような裁判は家庭裁判所ではなく地方裁判所で訴えを起こすことになります(この場合は、遺言書の有効性などが裁判での争点となると思います。時間もそれなりにかかります。)。
最後に、新に見つかった遺言書を破棄したり隠したりしたらどうなるのかという点ですが、新に見つかったのは自筆証書遺言書だと思います。その場合、法律に定める要件を欠いた無効な遺言書となっている場合も多いものです。そこで、その点を確認するためにも、家庭裁判所での検認手続きを受ける必要があります(検認手続きに際しては、相続人全員に通知が行きます。)。
遺言書を廃棄や隠匿した場合の問題ですが、その場合は、相続欠格者となってあなたの相続権が失われるという問題も生じますが、遺言書が権利義務に関する文書ですので、それを誰が保管しているのは分かりませんが、仮にあなた以外の人が保管しているときに、あなたがそれを廃棄や隠匿した場合は、私用文書毀棄罪(刑法259条)に問われる場合がありますのでご注意下さい。
まず、遺言書が出てきたことを隠すことは相続欠格事由となり、その人が相続したものは無効となり、他の相続人でその分を分けることになってしまうので、遺言書が出てきたことは絶対に隠さないでください。その他に遺言書を偽造・変造・破棄した者も相続欠格者となります。
また、自筆証書遺言の場合は、開封するにあたって家庭裁判所の検認が必要になりますので、その前に開封しないように注意してください。もし、それを知らないで開封してしまった場合は、正直に家庭裁判所に申告して、その後の対応の指示を仰いでください。(遺言書を家庭裁判所に提出しなかったり、検認を経ないで遺言を執行したり開封した場合は5万円以下の過料が処せられることがありますので、正直に申告してください。)
次にご相談のように、遺産分割協議が整った後で遺言書が出てきた場合ですが、全員が遺言の内容を知った上で、すでに行われた遺産分割協議の内容に合意するのであれば、そのままその協議は有効となります。また、遺言書の記載において分割方法の定めが明瞭でない場合も、すでに行われた協議が有効となる余地はあります。
しかし、遺言書はおじい様のご遺志であり尊重する必要があります。遺言の内容と遺産分割協議の結果が大きく異なり、遺言でどなたかに協議の結果よりも多く相続させる旨の記載があった場合、その方が遺言の内容を知っていたのであれば、そのような遺産分割協議の意思表示はしなかったという場合は、遺産分割協議が無効となる可能性があります(これを錯誤無効と言います)。遺産分割協議後にお亡くなりになった方についても同様で、もしその方が遺言の内容を知っていたのであれば、そのような遺産分割協議の意思表示をしなかったであろうということが明白な場合は、その方の相続人が異議をとなえることができます。
そのような場合は、あらためて遺言書の内容を元に遺産分割協議を行うことになります。お亡くなりになった方の分については、その方の相続人が協議に加わることになります。
そこでお亡くなりになった方の相続分が減らされる場合は、その後その方の遺産を相続した方がその分を負担することになります。逆にお亡くなりになった方の相続分が多くなる場合は、その方の遺産についてあらためてその方の相続人の間で遺産分割を行いなおす必要が出てくることも考えられます。